令和3年度採用東藻琴食肉衛生検査所 食肉検査課
新居 剛
畜産学部獣医学課程出身令和5年12月時点
ある1日の流れ
- 8:30
- 出勤、所管食肉センターの控え室で搬入される牛の投薬歴や病歴を確認
- 9:00
- 牛の食肉検査開始(毎日100頭ほどの牛が搬入、生体検査及び解体後検査を6人で分担して実施)
- 12:00
- 昼休み
- 13:00
- 豚の食肉検査開始(毎日100頭ほどの豚が搬入)
- 14:30
- 食肉検査終了、メールチェック全部廃棄を指示した家畜については、検査内容をと畜検査簿に記録、検査中に届出伝染病を発見した場合は、家畜保健衛生所に届出
- 15:15
- 退勤(2時間の育児休暇による短時間勤務)
入庁動機・きっかけ
四国の香川県で育ち、大学進学を機に北海道の地を踏みました。大学時代には各地の食べ物のおいしさや迫力ある自然に魅せられて、北海道を好きになりました。その後、大学院で就職先を探す中で、任期付きの研究職で全国を転々とするよりも、北海道に根を下ろしたいと考えるようになりました。また、将来結婚して子育ても頑張りたいと考えていた自分にとって、子育て支援が手厚い北海道職員は魅力的な職場でした。しかしながら、自分は大学院卒業まで細胞の研究しかやってこなかったので、いきなり公衆衛生の現場で働くことには大きな不安がありました。このことを、先に入庁してと畜検査員として働いていた大学時代の同期に相談したところ、公衆衛生獣医の必要性を滔々と説かれ、入庁して挑戦してみたいと思い、北海道職員に応募しました。
今の部署の仕事について
「食肉検査課の主要業務は、食肉・食鳥肉の検査とと畜場・食鳥処理場内での衛生指導です。食肉検査には、と殺前に行う生体検査と、と殺後に行う解体後検査があります。解体後検査では、各内臓と枝肉について法律に定められた疾病や異常の有無を判断し、異常が認められた場合は一部または全てを廃棄します。この廃棄の判断は、臓器ひとつとっても農家さんの大切な資産ですから、国家資格を持つ獣医師の大切な仕事です。この業務は、新人研修や先輩方からの指導を通して、半年ほどで習得します。時には、肉眼的に疾病の有無や程度を診断できない場合があり、細菌や病理といった精密検査を実施します。中には教科書に記載がない様な所見に巡り合うこともあり、そのような場合は、科学的知見に基づき食の安全を図るため調査・研究の対象となります。また、衛生管理の指導では、作業前・中のと畜場内の点検や、とたいから採取した検体の微生物検査を行います。
学生時代の専攻や勉強はどう活きているか
大学で生理学と薬理学を専攻しました。そのため、専門知識が直接業務に活かされる機会は少ないです。しかしながら、大学時代から得意だった文献調査が活かされ、とても印象に残っているエピソードがあります。入庁して1年が経つ頃に、異動する先輩から診断がつかない筋肉病変の調査を引き継ぐように依頼されました。いわゆるテスト以外で病理診断をしたことがなかった自分ですが、大学の先生の「卒業してからもう一度勉強することが大切」という言葉を思い出し、筋肉の構造から再度勉強し、得意の文献調査を活かして類似の症例が記載された論文にたどり着きました。その著者に検体を送付したところ、「おそらく論文と同じ疾患だと思います」とのことでした。答えにたどり着くまで1年ほどかかりましたが、努力が報われてうれしかったことを覚えています。この筋肉病変は、縁あって現在も研究が続けられています。
働いて実感する魅力とやりがい、将来像
食肉検査のやりがいを感じるのは、家族と一緒にお肉を食べる時です。なぜなら、家族には安全なお肉を食べて欲しいし、その安全を確認すると畜検査員による業務の大切さを実感する時間だからです。また、この職場の魅力は仕事と子育てを両立できることだと思います。自分は子供が生まれてから3ヶ月間の育児休業を取得しました。おかげでパートナーの体力回復を待って職場に復帰することができました。現在は、毎日2時間の育児休暇を取得しています。これによって、子供を保育園へ送迎するだけでなく、余裕を持って家事をこなすことができています。子供が体調を崩して病院へ行く時や、事務所で仕事を行う時には、その都度シフトを調整していただいています。将来的には、仕事と家庭のどちらもより充実させたいと考えています。通常の業務はもちろん、中・長期的な取り組みが必要な調査研究にも挑戦していきたいです。
休日・プライベートの過ごし方
休日は、基本的に子供の相手で忙しいですが、子供と一緒にいろいろな場所を散策することが楽しみです。北海道では、春にはフクジュソウ、エゾエンゴサク、様々なスミレが次々に咲いていきます。短い夏には、クロユリ、エゾキスゲ、エゾスカシユリ、ハマナスといった華やかな花が見られます。秋には多種多様なキノコが顔を出します。自分が住むオホーツクには景勝地、原生花園や散策路が充実しており、子供と一緒に自然を全身で味わうことができます。
子供を寝かしつけた後は、ボーナスで買った顕微鏡で小さな生き物を観察することが密かな楽しみです。トビムシ、ササラダニ、エダヒゲムシ…目では点にしか見えない生き物の多様な姿は魅力的です。休日には地域の博物館のボランティアとして、町の生物調査やイベントの準備を手伝うこともあります。職場以外で地域の人たちといろいろな体験ができる貴重な機会です。